探究・キャリア教育

今の自分とじっくり向き合う時間。十日町・津南町の高校生と「探究」して見つけたその定義と自分の役割

探究とはなにか。2018年に学習指導要領に追加された「総合的な探究の時間」は、高校生が地域の人と関わって自分の将来について考える時間だという。デンマークやフランスに留学し、学びを通じた自己内省の機会を得てきた私でも、その定義がよく分からなかった。しかしこの夏、十日町市・津南町で行われた探究学習現場にインターン生として参加し、高校生とともにその答えを見つけることができました。探究教育に関わる全ての人に届けたい。越後妻有で蒔かれた探究の第一歩をお伝えします。

はじめまして。「ゆきぐに探究委員会」で学生サポーターとしてインターンをしていました、家中美思です。8月1日から7日までの1週間、「総合的な探究の時間」にお邪魔し、十日町市と津南町の高校生たちのサポートをしてきました。

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生まれも育ちも神奈川県横浜市。上智大学を1年休学し、福祉と教育を学ぶためにデンマーク・ノーフュンスホイスコーレに、ジェンダーや家族を中心とした社会学を学ぶためにフランス・リール大学にそれぞれ留学。現在はフランス語学科の4年次に在籍し、性別役割分業意識への問題意識のもと、社会学ゼミでジェンダー・ステレオタイプの表象について研究中。

探究とはなにか?という疑問からスタートした私ですが、十日町市と津南町の高校生との関わりを通して、これまで自分が受けてきた教育やもっていた悩みと重なり、今後自分の立場からどのように教育に関わっていきたいかを考えるきっかけになりました。

総合的な“探究”の時間とは?

総合的な探究の時間とは、2018年の学習指導要領の改訂で「総合的な学習の時間」から「総合的な“探究”の時間」に変わり、高校生自らが「自己の生き方を考える」や「地域の人と関わる」などの要素が追加されました。

私たちのボス(?)である探究キャリア教育コーディネーター・松井千枝さんは

「変化が激しくて先が見えない時代だから、自分で主体的に考えて情報を整理する必要がある。課題を解決したり、自分で目標を決めて生きていくための力を身に着けよう!」

と簡単にまとめています

「重要で面白そうだけど、実際にどう動いているのかよく分からない!」これが、「総合的な探究の学習」について学習指導要領を読み、松井さんから話を聞いた後の正直な感想でした。

なんでもOKな探究のむずかしさ

十日町市・津南町の高校生のサポートを通じてぼんやりと見えてきた探究の形は、自分で課題を設定し、どうやって進めるのかもアウトプットの形も自由という、「なんでもOK」な学びの時間

自由で楽しそうな反面、「何から手をつければいいの?」「自分のやりたいことって何?」と、戸惑っている高校生も少なくありませんでした。

そこで私たち学生サポーターは探究の第一歩として、生徒1人ひとりの興味関心がどこにあるのかを一緒に探る作業から始めました。

やりたいことをひたすら時間をかけて考えるこの探究の時間は、重要な時間である一方、学校の勉強や課外活動などで忙しい高校生が後回しにしてしまいがちでもあります。だからこそ、数年前まで同じ悩みを抱えた高校生だった私たち大学生が、高校生から率直な思いを受け取り、一緒に時間をかけて悩み、見つける役割でした。

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「好きなこと」「やってみたいこと」を探すワーク

何に取り組むかに悩んでいる高校生や、それに対するアドバイスに悩む自分に、これまでゼロから進める経験がいかに少なかったか、いかに設定されたゴールにひたすら向かっていたかに気づきます。ゴールも分からない、現在地も分からない、手段も自由。「探究」とは、自由に見えてとても難しい学習の時間でした。

一方で、探究によって得られる「面白そうなこと」の発見力やそれを形にしていく能力は、変化が著しい社会で不可欠になっていくことは簡単に想像でき、学習指導要領に追加されたのも納得できます。

「誰か」の「何か」のためではなく「今の自分」のための探究

十日町市・津南町の高校生とともに、手さぐりで探究に触れていくうち、探究とは、誰かや何かのための活動というより、「今」の「自分」に向き合う時間だと私の目には映りました。

また、松井さんの高校生たちとのやりとりを見ていると、探究では、これまでやってきたことの延長線や将来に向けた準備でもなく、「今」やりたいことに取り組むことを大切にしているようでした。

過去から逆算して整合性があるかとか、将来のためにこうしておいた方がいいとか、街や人のためになるとか、そういった枠をいったん置いておいて、「起点は今の自分」という、高校生にとっても新鮮な取り組みに関わることができました。

「楽しい」を増やしていく高校生の可能性

1週間という短い間でしたが、探究に取り組む高校生の姿を間近で見てきて、多くの高校生が「やりたいこと」に悩んでいることよく分かりました。

高校生たちもはじめは、興味分野が幅広くあっても、自分の興味の程度・深度に自信を持てずに「これがやりたい!」「これがすごく好き!」とはっきり言えない状況でした。しかし、話を深めていけば、「服が好き」「パワポ作るのが好き」「人をサポートするのが好き」「絵が好き」「プレゼントするのが好き」と言葉になってきたり、まだ言葉になっていなくても、きっと人と話すのが好きなんだろうな、と実感できる高校生など、興味ややりたいことの種が見えてきました。

自分が取り組んでいることに対し、「楽しい!」や「面白い!」「好き!」という気持ちをモチベーションに全力で素直に向き合っている高校生たちの姿を見て、必ずこの先に繋がっていくものがあるはず!と確信しています。

地域の大人にインタビューをする高校生たち

「探究」とは!私なりの定義

私が1週間関わってみて感じた「探究」とは、ずばり「自分に種をまく作業」です。

今回お邪魔した十日町市・津南町で探究に取り組む高校生たちは、自分の外にあるものに課題やテーマを設定して取り組みながら、自分の中にある楽しいと感じることやアウトプットの傾向を知るなど、取り組みを通して自分の像が見えてきていました。

すぐに将来就きたい仕事やこれからの道筋が見えてくるわけではないけれども、その種となるような、自分が楽しいと感じることや少しの成功体験を作ることができる時間が探究。

この探究の時間は、教育の専門家だけではなく、私たちのような大学生や地域の大人など、かつて高校生を経験してきた人と関わること、そして頭だけではなく手も足も動かしたアウトプットを通して自分を見つけていくことのできる、大きな可能性を秘めている取り組みでした。

また、松井さんを中心としたゆきたん関係者の皆さんや、十日町市・津南町の先生たち、交流会に参加してくださった皆さんと改めて会話してみると、多様なバックグラウンドをもつ方や、高校生の探究活動に高い熱量を持っている方がたくさんいました。そんな、高校生にとってロールモデルとなる人や相談に乗ってくれる人の多い十日町市・津南町は探究の可能性に溢れています。だからこそ、今回、十日町市・津南町のみなさんと高校生の交流会は大きな意義のあるものでした。

これから私は職業として教育に携わっていくわけではありません。しかし今回、やりたいことや関心のあることを探る「探究」のお手伝いと多様な大人との関わりの意義を目の当たりにして、自分の教育へのかかわり方が見えてきました。

これから、身近な大人として、今回関わったような高校生も含め、誰かの可能性や種を見つける「探究」のお手伝いができるように、人生経験を重ねていきたいです。

楽しい1週間をありがとうございました!
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