探究・キャリア教育

十日町市・津南町で行う地域探究。ゆきぐに探究委員会の魅力をテキストマイニングで分析してみた。

こんにちは!ゆきぐに探究委員会に学生サポーターとして参加しています。上越教育大学教職大学院の間嶋勇太です。

みなさんは探究学習という言葉をご存知でしょうか。探究学習の基盤となる「総合的な探究の時間」は生まれて間もない科目で、その在り方については様々な議論がなされています。教員をはじめとする大人が探究学習を経験していない故の難しさもあります。

そんななかで学習の主役である高校生がどうしたら学びを最大化できるか。ゆきぐに探究委員会の高校生のリアルな言葉を通して考えてみませんか。本稿ではテキストマイニングにより、ゆきぐに探究委員会の夏の中間発表会・交流会での高校生の様子や感想から探究学習の魅力を分析していきます。

自己紹介

趣味のウィンタースポーツ

千葉県習志野市出身。大学卒業後、就職を機に新潟県胎内市に移住。化学メーカーの研究開発部で5年間製品開発や量産化の仕事に従事。2024年から上越教育大学教職大学院でキャリア教育や教育カウンセリングを中心に学んでいます。キャリア教育について調べるなかで探究学習に興味を持ち、ゆきぐに探究委員会に学生サポーターとして参加しました。

探究学習とは?

探究学習とは、一言でいえば自ら問いを立て、課題を解決していく学習のことです。2022年から教科化された「総合的な探究の時間」では探究学習の過程の中で自己の在り方や生き方を考えることが1つの目標となっています。具体的な解釈は探究・キャリアコーディネーターの松井さんが記事にまとめているのでこちらをご覧ください。
松井さんの記事「総合的な探究の時間って何?」

私は初めて学習指導要領を見た際、なんて難題だと思いました。自己の在り方なんて高校生のころに考えたこともありません。

加えて「総合的な探究の時間」はそれをサポートする私たちが経験してこなかった点で難しさがあります。また、地域や高校によって取組や熱量は千差万別です。予算も時間もないし、やり方も分からない。課題が山積みなんだと思います。

そんな現状の中で、ゆきぐに探究委員会では高校生がやってみたいことをやる!をテーマに地域の方々と連携した探究学習に取り組んでいます。舞台となる十日町市と津南町は日本でも有数の豪雪地帯であり、大地の芸術祭の開催地でもあります。そんな個性的な街での先進的な探究学習、非常に面白そうでした。

至るところにアートが点在する越後妻有地域

なぜいま探究学習なのか

日本はいま人口減少社会です。激しい競争を勝ち抜き、良い大学に入って良い企業に就職できたら幸せという価値観は揺らぎつつあります。多様な価値観が尊重される社会になりつつあります。

一見よさそうな変化に見えますが、ここには難しさもあります。画一的な価値観の中では考えなくてもよかった自分らしさや自分軸のようなものを否応にも考えさせられると捉えることもできるかもしれません。

「生き方が多様化、個別化する中で自分の役割を見出し、複雑な社会の要請に応えながらよりよく生きていきましょう」というメッセージが探究学習の教科化に込められていると解釈しています。

生徒はどうしてゆきぐに探究委員会へ?

ゆきぐに探究委員会のメンバーの高校生はどのような思いで参加に至ったのか。発表準備の合間に参加のきっかけなどをインタビューしてみました。
ゆきぐに探究委員会とは?

「他校のひとや地域のひとと関われそうだったから」「他校に友達がいたから」「松井さんの経歴や人間性に惹かれたから」などいろいろな想いがありました。ですが意外にも多かったのが「先生に誘われてなんとなく」という意見でした。そう答えた生徒ももちろん大なり小なり興味や想いがあって参加を決めたと思います。一方できっかけは意外とあっさりしているのかなと感じました。

よく考えればまだ高校1年生、2年生です。偶然の機会に飛び込んでみる姿勢はとても素敵です。そんなゆきぐに探究委員会のメンバーが初開催の「夏の交流会・中間発表会」でなにを感じたのか、生徒の振り返りをテキストマイニングにより分析していきます。

なにやら楽しそうなゆきたんメンバー

テキストマイニングとは

テキストマイニングとは、膨大なテキストデータを分析し、有益な情報を抽出する技術です。具体的には、形態素解析という技術によって文章を単語単位に分割し、頻出語分析や共起分析(単語同士の結びつきの分析)により文章から新たな知見を見つけ出すことを目的とします。

テキストマイニングのメリットは自由記述の文章を客観的に分析できることです。以前までのアンケート分析では、ある質問に対し「とてもそう思う」「そう思う」「どちらともいえない」などの尺度を与え、統計処理をかけることで客観性を持たせていました。一方でテキストマイニングでは文章そのものをコンピュータで分析するため、文章の情報量を高く保つことができ、回答者の生の声を客観的に分析することができます。

今回はテキストマイニングにより、交流会を終えた高校生の振り返りを分析してみました。分析にはPythonの自然言語処理ツールであるGiNZAを使用し、nlplotというツールを用いてワードクラウドの形でデータを可視化しました。

交流会と通じて生徒が感じたこととは

交流会の振り返りとして高校生が書いたアンケートを分析していきます。アンケートには良かった点、反省点、2学期やりたいこと、感想の4項目を設け、テーマについて自由に記述してもらいました。ここでは2学期やりたいことを除く3項目について見ていきます。
交流会の詳細はこちら

交流会で生徒は何を感じた?

「交流」「話す」「他校」「人」「大人」などの単語が多くの生徒からでてきています。今回の交流会を通して普段関わることのないたくさんの他校の生徒や地域の大人の方との交流がとても印象に残っいる様子で、夏の交流会の目的を生徒たちはしっかりと達成できています。

感情を表すことばに注目すると、「嬉しい」「楽しい」「緊張」ということばが見受けられます。交流自体を楽しんだり、交流できること、いろいろな意見をもらえたことなどに喜びを見出せていたと読み取れます。また、高校生にとって自分がやりたいことについて発表し意見を交わす機会は少なく、高校生のみなさんの緊張が感じられます。発表をする中で上手くいかないところもたくさんあったでしょう。

開会式や発表会の様子を見ていても、少し緊張感もありつつ、高校生はとても良い表情をしていました。緊張するということは、それだけ真剣に取り組み、交流会を良いものにしたい!という気持ちの表れです。真剣に取り組んだ経験、緊張した経験はしっかりと記憶に残り、きっとこれからの財産になります。

生徒が感じた課題とは?

次に難しかったことに焦点を当てて見てみましょう。

難しかったこととしては、話すことや伝えること、質問に関することが多く挙がっています。発表って中高生のころはなかなか機会がなくて難しい。私もずっと苦手でしたし今も苦手です。

発表の難しさってやってみないと分からないし、なかには悔しい気持ちもあったかもしれません。生徒のアンケートには全員何かしらの課題が書かれていました。こうして課題が自然に湧き出てくるのも真剣に取り組んでいる証拠であり、生徒が探究に取り組めている証です。どうしたら課題を克服してより良いものができるか、今後の活動の中で一緒に考えていきたいですね。

個人的に印象に残っているのは「大人の方の質問が難しくてうまく答えられなかった」「もっと勉強しないとと思った」という感想です。探究学習には教科書がないし、答えがありません。同じものを見てもいろいろな考えを持つ大人がいて、様々な質問をされたと思います。質問に答えるには知識もたくさん必要です。自分の活動への理解や想いをしっかり持っていないといけません。表現する能力も求められます。上の感想を持った生徒はそんなことを感じたのではないでしょうか。

学校の授業では「想い」ってあまり求められませんよね。探究を通じて自己を見つめ、やりたいことが見つかり、もっと勉強したいと思えたら授業も楽しくなると思います。ゆきぐに探究委員会は有志による委員会活動ですが、今後の探究学習が学校とどのように調和していくのか興味深いです。

「交流すること」について

最後に夏の交流会の大きなテーマである「交流」に関する記述を見てみましょう。

高校生は交流の大切さを身をもって実感しており、交流から多くの学びを得ています。交流を通して1人では思いつかないアイディアやアドバイスをもらう。課題を見つけて自分をアップデートしていく。探究学習が目指すひとつの姿です。

なによりみんな「自分のやりたいこと」を真剣に考え、主体的に取り組んでいるため、言葉が生き生きとしてきます。自分の好きなことと地域との関わりを見つけ、コラボし、行動する。そんな地域探究の在り方に触れた1日でした!

生徒の感想から見えてくるゆきぐに探究委員会の魅力

生徒の姿から感じたこと

高校生の感想を通じて感じたこと。それは生徒のみんなが人との交流や発表、インタビューに強い印象を抱いていたこと。そして他校の生徒や地域の大人との交流を楽しむことができる。交流から学ぶことができるメンバーだということです。交流を楽しむことができるのは、松井さんや各学校の先生方、地域の素敵な大人の方々が高校生に敬意を持って接しており、また、活動に関わる方みんなで楽しい雰囲気を作り上げていこうとする姿勢があるからこそだろうなと、今回のインターンを通じてとても強く感じました。

「総合的な探究の時間」の大きな目的の1つは探究を通して自己の在り方、生き方を考えることです。発達心理学者のエリクソンは青年期(13~22歳くらい)の発達課題をアイデンティティの獲得としています。自分とは何で、どう生きるべきか、悩む年頃なのでしょう。自分を知るという活動は1人ではできません。他者との交流を通して初めて自分を知ることができると思います。

ゆきぐに探究委員会の魅力とは

ゆきぐに探究委員会では高校生がやりたいことを探し、取り組める。たくさんの学生や大人と関わる中で様々な考えや価値観に触れ、感情を動かし、少しづつ自分を知っていく。そんな探究の形を表現しています。

探究学習の経緯や目的って考えれば考えるほど難しいです。効果を疑問視する声もよく耳にします。

正直なところ私自身は探究をはじめとする様々な活動を通して、高校生が今一生懸命取り組みたいことを見つけられ、なにか困ったときや悩んだとき、嬉しいことを話したいときに話を聞いてくれる仲間や地域の存在があり、心が健康でいれればそれで良いと思っています。実はそんな場が、地域と学校がつくる街の原風景だったのでは?とこの記事を書きながら考えていました。

ゆきぐに探究委員会はそのような温かい環境が大きな魅力です。高校生のみなさんはこの環境を存分に生かして学びを深めていってください!

この1週間はいろいろな方の活動や言葉から学ぶことばかりでとても刺激的でした。私自身も交流の大切さに気付かされた1週間でした。貴重な機会をいただきありがとうございました。

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